ケチってはいけない

横山大観さんの『生々流転』という作品は、日本一長い画巻ですが、この作品は、もう一つ日本一と言われているものがあります。それは、原価がものすごく高くて、絵画の中では日本一原価が高い作品だという説があります。

 

『生々流転』という作品は、水墨画です。水墨画ですから、墨だけで描いています。墨だけで描いているのに、なぜ日本一原価が高いかと言うと、ものすごく高価な墨を使っているからです。

 

『生々流転』を描くときに使った墨は、「玄鯨宝柱」という幻の墨です。これは、不確かな情報ですが、この墨の価格は、家一軒分あったそうです。(『生々流転』を描くのに家1軒分の墨を使ったのか、ほかの作品の分と合わせて家1軒分の墨を使ったのか、墨1本が家1軒分したのか、不確かです。)とにかく、『生々流転』を描くのに使った墨は、ものすごく高価なものだったようです。

 

横山大観さんは、比較的若い頃から有名になったので、裕福と思われがちですが、意外と貧乏な生活をしていたという話があります。どうしてかと言うと、横山大観は、ものすごく高価な画材ばかり使っていたからです。

 

芸術家の中には、作品をつくる(描く)のに、ものすごく高価な画材を使う人がいます。そして、原価よりも安い値段で売る人までいます。

 

文人画家であった池大雅さんには、こんなエピソードがあります。池大雅さんは、絵を描く依頼を受けたとき、前金で百両を要求しました。1ヶ月ほど経って、依頼者が池大雅さんを訪ねてみたところ、「これが、一番上手に描けたと思います」と言って、1枚の絵を手渡したそうです。

 

依頼者が、池大雅さんのアトリエを見たところ、多数の絹本の織りが散らばっていて、多数の練習をしたあとが伺えました。その練習をした絹本だけで、軽く百両を超えると一目でわかるほどだったそうです。

 

一流の芸術家ほど、画材などに対して、ケチらない、良いものだけを使っているような気がします。画材をケチるような人は、一流になれないかもしれません。

 

これは、芸術家に限りません。何かを極めたいと思うのだったら、それに関するものをケチってはいけないと思う。無駄になるかもしれないけど、いつも最良のもの、良質のものを追い求めるといい。こういうことをしている人が、一流の作品を生み出すことができるのかもしれません。