メンタル・アカウンティング

今年のノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラーさんの研究で有名なものに、「メンタル・アカウンティング」という話があります。

 

メンタルアカウンティングは、「心の会計(心の家計簿)」とも呼ばれ、人がお金に関して何か意思決定をする際に、様々なことを勘案して合理的に判断するのではなく、狭いフレームの中で非合理的に判断してしまうことを言います。

 

人は、心の中にいくつかの会計勘定を持ち、「あぶく銭は散財してもかまわない」「苦労して稼いだお金は慎重に大切に使う」というように、お金の入手方法に応じて、お金を仕分けする心理傾向があります。

 

人は、メルタルアカウンティングで非合理的な行動を取ると言われています。例えば、投資やギャンブルで損をするとそれを取り戻そうとして投機的な行動に出たり、ギャンブルで儲かった大金を一度にパッと使ったり、普段は節約に励んでいるのに高いブランド品を衝動買いしたり、といったことが挙げられます。

 

カーネマンとトヴェルスキーが行った実験があります。

 

(A)あるスポーツ観戦のチケット当日券(5000円)を買おうと思っています。ところが、財布に入れていたはずの2万円のうち5000円を無くしたことに気づきました。このとき、当日券を買いますか?

 

(B)5000円のスポーツ観戦チケットを買っていました。しかし、会場でチケットを忘れたことに気付きました。その会場で当日券が5000円で売っていました。このとき、当日券を買いますか?

 

AもBも、経済的なロスは同じです。しかし、実験の結果、Aの場合88%は購入すると回答し、Bの場合は46%しか購入すると回答しなかったそうです。

 

Aの場合、無くした5000円はチケット代とは別物と判断するので、再度購入しやすい。Bの場合、5000円+5000円=合計1万円のチケット代だ(2倍の料金を支払うことになる)、と判断して購入をためらう、と言われています。

 

セイラーさんは、このような実験も行いました。「価格15ドルの計算機を5ドル安く買えるなら、車で20分遠回りをしますか?」という質問しました。次に、「価格125ドルの革のジャケットを5ドル安く買えるなら、車で20分遠回りしますか?」と質問しました。

 

どちらの場合も、車で20分遠回りすれば5ドル安く買える、という話です。最初の質問に対しては、68%がイエスと回答し、2番目の質問に対しては29%がイエスと答えました。つまり、大きな買い物においては小さな金額は重要とは思えない、という心理が働きます。

 

人間は、合理的な判断をしているつもりでも、不合理な判断をしていることが多々あると思います。にんげんだもの、それでもいいのかもれません。