『仏師という生き方』(江里康慧著)

先日、『運慶展』を観てきました。運慶は、鎌倉時代に活躍した著名な仏師です。さすがに、超一流の仏師だけあって、見ごたえのある展示会でした。

 

展覧会を見終わったあと、『仏師という生き方』という本を読んだことを思い出しました。家に帰ってから、この本を再読してみました。

 

著者の江里康慧さんは、1943年京都生まれ。仏師の松久朋琳さんに入門して、仏師としての道を歩みはじめます。

 

父親の江里宗平さんも仏師であり、松久朋琳さんとは友人の関係です。また、奥様の江里佐代子さんは、截金師(きりかねし)であり、人間国宝になっています。この本の中には、江里宗平さん、江里佐代子さんが書いた(インタビュー?)部分も含まれています。

 

「一刀三礼(いっとうさんらい)」という言葉があります。この言葉は、仏像を彫刻する時に、一刻みするごとに三度礼拝することです。すなわち、敬いのある清い心で彫ることです。この本も、一文一文が、仏像を彫るときと同じような気持ちで書かれているような気がしました。

 

江里康慧さんは、師匠の松久朋琳さんから、

「仏像は彫るものではない、木の中におられる御仏を、木屑を払ってお迎えすることだ」

「ヨーロッパを源流とする彫刻は、自己を表現すること、個性を主張することがテーマだが、仏像彫刻の場合は、そんな自己を否定し尽さんとあかん。個性などというものを否定し尽してしまうところに、真実の自己を見出す機縁がある」

という言葉をかけられて、仏師としての道を歩んできました。

 

原木を自分に見立てます。その原木という自己の中に、本当の自分がいる。その周りの余分なものが煩悩、執着である。そういう余分なものを払いのける、取り除くのが、仏像を制作するということです。

 

仏師は、名前を目につくところには入れません。完成した仏像は、「○○商店」の作になっています。仏師の名前を入れたら、たちどころに弾かれるそうです。

 

この本には、江里康慧さんの仏師としての心得などが詳しく書かれていて、興味深いものでした。仏師について興味がある方にはお勧めの本です。