檀家制度を廃止した住職(見性院の橋本住職)

AERA 8月7日号で、「檀家制度廃止」という、江戸時代から連綿と続く仏教のスタイルに一石を投じた古刹の僧侶についての記事が掲載されていました。以下は、私が編集したもので、本文とは異なる箇所があります。

 

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地方を中心に集落の高齢化や過疎化、地域共同体の希薄化で、江戸時代から400年近く続く檀家制度が、揺らいでいる。そんな時代に、「改革」に名乗りを上げた僧侶がいる。埼玉県熊谷市にある曹洞宗の古刹・見性院の橋本英樹住職だ。

 

見性院は400年以上の歴史を持ち、橋本住職は23代目に当たる。駒澤大学大学院を修了し、曹洞宗の大本山・永平寺で3年間修行。25歳の時に見性院の副住職になった。しかし月収は10万円。とても生活できないので、葬儀に僧侶を仲介する10近くの派遣業者に登録しアルバイトに明け暮れた。

 

2007年、42歳の時に先代住職だった父の跡を継ぎ同院の住職となると、改革に乗り出した。11年4月、見性院の檀家総代が集まる役員会に「檀家制度の廃止」を諮った。前代未聞の檀家の解放宣言に、檀家たちからは厳しい声が飛んだ。

 

議論を重ね12年6月、檀家制度の廃止に踏み切った。宗教・宗派、国籍すら問わない、誰にでも開かれた「みんなのお寺」にした。同時に、400軒近くあった檀家との関係をいったん白紙に戻し、「随縁会」という会員組織にし、名称も檀家から「信徒」に変えた。旧来の檀家は全員が信徒に移行した。

 

檀家制度廃止にあたり橋本住職が重視したのが、「明朗会計」と「サービス重視」だった。まず手をつけたのが、法要の際のお布施だ。

 

仏教界は「お気持ち」というあいまいな言葉で、高額なお布施をとってきた。これを値下げし、明確な料金にした。たとえば、僧侶1人が通夜と葬儀でお経をあげ「信士・信女」の戒名を授けた場合、20万〜25万円。以前は50万円もらっていたのを、半額以下にした。

 

遺骨を郵送で受けつける「送骨サービス」も始め、通販サイト大手のアマゾンジャパンが始めた僧侶派遣サービス「お坊さん便」にも賛同した。

 

しかし、時代が後押ししたのか、橋本住職が掲げた理想に、賛同の声も集まった。送骨は全国から集まり、永代供養の需要も増えた。葬儀・法事の回数は以前の3〜5倍。見性院の信徒は約800人と「改革」前の2倍となり、寺の収入基盤は確保された。

 

同院では僧侶として守るべき最低限の戒律を「心得十カ条」として掲げる。▽ゴルフ・釣りはしない▽ギャンブルはしない▽高級車に乗らない──といった項目が並ぶ。

 

寺など宗教法人の経理はベールに包まれ「ブラックボックス」だ。そんな中、見性院は収支を公開している稀有な寺だ。

 

見性院の収入は、檀家制度をやめた当初こそ伸び悩んだが、1年を過ぎると増加に転じた。14年度は約9980万円、16年度は約1億2816万円となった。先代のやり方を踏襲していたころは3千万円弱だったというから、経営規模は実に4倍以上に拡大した。

 

収入の大きな柱となっているのが、永代供養。料金は合同納骨プランが3万円、10年間個別保管プランが10万円など。各地から年間200件近く受け入れる。葬儀や法事の数は以前の2〜5倍になり、葬儀は年35件、法事は年約300件執り行う。

 

一方、支出の合計は約1億2480万円(16年度)。ここには住職や寺のスタッフ10人分の給料も含まれる。給料は月給制にしていて、橋本住職は月約50万円をもらう。差し引き約336万円の黒字となった。

 

風穴は開いたが、先の橋本住職は、改革はまだ「5合目」だという。いまだ見性院の若い僧侶が他の寺に行くと、「あそこのお寺には行くな」と言われ、旧檀家の中には檀家制度廃止を完全に納得していない人もいるという。それでも将来、M&A(統廃合)によって他の寺と手を携えグループとしてまとまるHD(ホールディングス)化も橋本住職は視野に入れている。

 

すでに、こうした考えに賛同する僧侶は宗派を超えて全国に70人近くいて、「善友会」としてお布施の額を明示し、僧侶の紹介など横のつながりを強化している。経済的に自立できる「強いお寺」を増やし、仏教の教えを広めていく考えだ。その「頂上」には何が待っているのか。橋本住職が言う。

 

「日本の仏教は死後にかかわりすぎてきた感があります。お釈迦様の説いた仏教は、一貫して生きるための教え。生きているうちからお寺と縁を結んでもらい、その最終章に葬儀と供養があるのが本来の姿。信徒が生きている間に何ができるのか。それを追求していきたい」

 

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文化庁が行っている「宗教統計調査」によると、平成26年12月31日現在の神社の数は、81342社、お寺の数は、77254寺院だそうです。今、コンビニの数は、6万くらいですので、神社、お寺の数はコンビニよりも多いことになります。

 

神社の数が、お寺の数よりも多いのは、意外な発見でした。お寺の方が、葬式などのイベントが多く、収入を得やすいように思います。

 

こういっても、お寺も神社も斜陽産業ではないかと思います。葬式をあげる人が少なくなるなどして、小規模のお寺、神社は、収入が減少するかもしれません。今、存続しているお寺、神社の半分くらいが、すぐになくなっても、おかしくありません。

 

これからも、見性院の橋下住職が行っているような、今までの既存のシステムを打ち破るようなことをする住職が増えてくると思います。

 

どんな職業でもそうですが、今までと同じようなことをしていると、次第に廃れてくることが多い。今とは違う革新的なものを導入することにより、規模が拡大していきます。

 

今までの既成の価値観を捨て、新しい試みをする。いつまでも、旧態依然のやり方をしていてはいけないと思う。新しい試みにチャンレンジしている人に拍手を送りたい。