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見えないゴリラの実験

『錯覚の科学』(クリストファー・チャブリス、ダニエル・シモンズ著)という書籍の中に、「見えないゴリラの実験」が書かれています。著者らは、「見えないゴリラの実験」で、イグ・ノーベル賞を受賞しました。この実験は、多数の書籍で引用されています。

 

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二つのチームがバスケット試合をする短いフィルムを制作しました。一方のチームは白シャツ、もう一方のチームには黒シャツを着てもらいました。

 

実験の参加者にビデオを見せ、白シャツの選手がパスをする回数を数えてもらい、黒シャツの選手のパスは無視するように話しました。ビデオが終った直後に、参加者は自分が数えたパスの回数を答えました。

 

このビデオの途中で、ゴリラの着ぐるみを着た女子学生が登場し、選手のあいだに入り込み、カメラのほうに向かって胸を叩き、そのまま立ち去りました。

 

参加者に、ゴリラのことを尋ねたら、驚いたことに、およそ半数の参加者がゴリラに気が付かなかったのです。

 

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この見落としは、予期しないものに対する注意力の欠如から起きます。科学的には、「非注意による盲目状態」と呼ばれています。ゴリラが見えないのは、視力に問題があるのではありません。目に見える世界のある一部や要素に注意を集中させているとき、人は予期しないものに気づきにくいのです。

 

著者らは、被験者の難度を上げて、注意力の限界を調べてみました。今度は、白シャツチームの空中パスとバウンドパスを別々に数えてもらいました。すると、予想通り、予期せぬものを見落とす割合が2割増えました。

 

その次に、携帯電話が注意力に与える影響を実験してみました。被験者を2グループに分け、一方は、パスの数だけを数えてもらい、もう一方は、パスを数えながら携帯電話で話をしてもらいました。

 

パスを数えるだけのグループでは、およそ3割の被験者が予期せぬものを見落としました。携帯電話で話しながらパスを数えたグループは、9割の被験者が予期せぬものを見落としたのです。

 

現在、日本では、車で携帯電話を使うことが禁じられています。その代わり、ハンズフリーで携帯電話を使っている人がいます。しかし、携帯電話を手に持って電話をしているときとハンズフリーで電話をしているときを比べると、注意力という点からすると、どちらも同じである、という実験データが出ています。

 

ハンズフリーで電話をするのは安全だ、と思っている人がいますが、これは誤りです。ちなみに、助手席の人と話をするのは、注意力という点からは問題ありません。

 

多くの人は、「自分は正しくものを見ている」と思っているかもしれませんが、実際は違うようです。「人は、見ようとしていることしか見ていない」と言ってもいいかもしれません。

 

―世の中には、手に入れがたいものが3つある。鋼鉄、ダイヤモンド、そしておのれを知ることだ。(ベンジャミン・フランクリン)―

 

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