今ここ

過去や未来ではなく、「今ここ」(「中今」)に意識を集中しよう、という話を聞くことがあります。最近、流行りの「マインドフルネス」も、「今ここ」に意識を集中させるものらしい。

 

私は、「今ここ」や「マインドフルネス」にあまり興味がありません。「今ここ」に意識を向けるのは大切かもしれませんが、人間の意識は、未来へ行ったり、過去へ行ったりするのが当たり前だと思います。

 

頻繁に「今ここ」と言っている人は、「今ここ」にいないような気がします。もし、「今ここ」に在るのだったら、あえて「今ここ」なんて言わないと思います。

 

人間は、考えないようにしても、思考は、未来へ行ったり、過去へ行ったり、頭の中をめぐってしまいます。思考を止めるのは、極めて難しい。

 

過去や未来に思考が行ったり来たりするよりは、「今ここ」に集中して、今を大切にする。これは、精神の安定にも役立ちそうです。こういう意味で、「今ここ」に生きるのは、良いことだと思います。

 

人間が、動物と大きく異なるのは、「未来を予測する」「過去を振り返る」という点だと思います。動物は、未来を予測したり、過去を振り返ることはありません。

 

動物は、「明日食べるものがなかったらどうしよう」「地震が起きたらどうしよう」「昨日、餌を取るのに失敗して悔しかった」などという感情はありません。動物たちは、常に「今、食べるものがないか」と考えています。人間以外の生物は、すべて「今ここ」に生きていると言ってもいいでしょう。

 

人類は進化の過程において、脳を大きくし、その構造を変化させました。進化の過程において、大きく変わったのは前頭葉です。前頭葉は、進化の過程で、著しく大きくなりました。

 

前頭葉に損傷を受けると、不安、恐れなどの感情が消えてしまうと言われています。それで、うつ病の患者に、前頭葉の一部を損傷させる治療法が行われていた時期があります。

 

しかし、前頭葉を損傷させることによる弊害が起こりました。それは、「計画ができない」「未来を予測することができない」というものでした。そのため、現在では、前頭葉を損傷させる治療法は行われていません。

 

現代人が前頭葉が発達することにより、獲得できた性質は、「未来を予測する」ということです。その一方で、欠点?と言えるものは、「未来に対して不安になる」ということかもしれません。

 

人間は、未来を考えるのが大好きです。例えば、「明日、デートのときは、どこへ行こうかな」「宝くじが当たったら、何を買おうかな」というように。しかし、「今ここ」に集中していると、このような未来を想像できません。私は、「今ここ」に集中しているより、楽しい未来を考えていた方が好きです。

 

人間の脳の構造を見ると、人間の本質は、「今ここ」に生きるようにできていないと思います。「今ここ」に生きるのは、退化であり、前頭葉に対して「働くな」と言っているようなものかもしれません。

 

「今ここ」という考え方は、悪いものではないと思いますが、無理に「今ここ」を目指さなくてもいいような気がします。どのように、「未来」へアプローチするか。こちらの方が大切なことかもしれません。