「黒」を「白」に変える(鈴木おさむさんの話)

放送作家の「鈴木おさむ」さんは、森三中の大島美幸さんと交際0日で結婚した人です。鈴木さんが手がけた番組には、以下のようなものがあります。

 

SMAP × SMAP 1996年4月〜

めちゃイケ(めちゃ×2イケてるッ!)1996年10月〜

いきなり!黄金伝説。 2000年4月〜

もしもツアーズ 2000年10月〜

人生が変わる1分間の深イイ話 2008年2月〜

ほこ × たて 2011年1月〜2013年10月

有吉反省会 2013年4月〜

 

「鈴木おさむ」さんが、こんな文章を書いていました。良い話だな、と思ったので紹介します。

 

以下は、鈴木さんの文章を、私が大幅に校正、修正、加筆したものです。鈴木さんの意図と異なる箇所があるかもしれません。

 

⭐⭐⭐⭐⭐

 

19歳、大学1年生からこの仕事をはじめた。1年ほど早く放送作家になったTさんという先輩がいた。このTさんは、「明治大学替え玉事件」で、替え玉受験をした本人だった。Tさんは替え玉受験がばれて退学処分になった。

 

普通の人だと、「せっかく明治大学に入ったのに、この人の人生は終わったな」と思うでしょう。しかし、Tさんの周りの人は、褒め称えるように、この事件について笑っている。「こいつの人生、おもしれえだろ」と言わんばかりに。

 

この業界に入って、最初の衝撃だった。僕が「黒」と思っていることは、この業界では「白」だった。

 

この業界では、普通の大学生と元犯罪者が同じ企画を出すと、元犯罪者の方を選ぶ。

 

人生の付加価値。その人がどれだけ面白そうか?という付加価値が大事なんだと気づかされる。

 

ここで、一度、脳が大きく更新された。この業界で生きている限り、面白い人生を歩んでいる奴じゃないと、なかなか人に認められないと。この脳の更新によって、今まで黒かったものが白く見え始めた。

 

どうしたら自分の人生に付加価値が出るのか?本気で考えた。当時は、SMクラブが増え始めた時期で、SMクラブへ行ってみた。

 

プレーを終えた翌日、仕事場でおそるおそるSMクラブのことを話してみた。すると、「マジか!お前すげーな!どんなところだった?」と初めて僕に興味を持ってくれた。僕のSM体験記を手を叩いて笑ってくれた。その結果、「SM君」というアダ名がついた。でも、その日から僕が書いていくものに興味をもってくれるようになった。

 

これで決定的になった。僕の1回目の脳の更新は終了。世の中の全てのことが、自分がどうしたらもっと興味を持たれる人間になれるのか?というフィルターで見る脳になった。

 

2回目の更新は、25歳の時に行われた。親から電話があって、一緒に銀行へ行った。そこで、親にものすごい借金があることがわかった。銀行に5千万円、金融会社に3千万円、闇金融に2千万円、合計1億円。支店長は、僕に「お父さんの破産の申し立てをしてください」と言った。

 

僕は数日間仕事を休んだ。正直、そんな精神状態で面白いことを考えるバラエティ番組の会議に行けるメンタルではなかった。家族で逃げなきゃいけないかもと思った。

 

そこまで考えていた時、Kさんから電話があった。Kさんは、常に笑いのことを考えているバラエティの鬼のような存在。僕に笑いの方法を教えてくれた人だ。Kさんに、状況をすべて話した。これを聞いて、Kさんはこう言った。

 

「つらいかもしれないけど、この1週間でお前が経験したことは他の人が経験したことがないことだから、会議に来て、この経験を面白くしゃべってみろよ」

 

なにを言っているんだと思った。いきなり1億円の借金を背負い、放送作家を辞めようと思っている人に、「面白くしゃべってみろよ」ってどういうことだよ。

 

翌週、会議に行った。その日で辞めるつもりだった。挨拶をしに行こうと思って会議に行った。すると、会議の終わりにKさんが言った。

 

「ここで、おさむから面白い発表があります。」

 

僕は銀行に呼ばれた日から、この1週間の出来事を明るく話した。

 

すると、・・・みんなが笑ってくれた。僕のこの1週間の辛くて辛くて仕方がない話を笑ってくれた。泣きそうだった。だって、人生で最悪だと思っていたこの1週間の話が、面白い話に変わってるんだから。

 

この時に、脳が2度目の更新をされた。どんなに辛いことでも周りに面白く話すと、前向きになれると。ある意味壊れたのかもしれない。だけど僕の脳の中での「苦しみ」「辛さ」を感じる部位が「面白い」に変換するようになったのだ。すごく楽になった。辛い話を笑ってもらえるんだから。

 

そこからだった。寝る暇もなく仕事して、お金はほとんど借金に消えていくのが数年続いた。だけど、腹が立ったり、悲しいことが起きると、会議で面白い話に変えた。これがパワーだった。生きるパワーだった。

 

⭐⭐⭐⭐⭐

 

「苦しみ」「辛さ」を「面白い」「笑い」に変換する脳になったという箇所が、心に響きました。

 

逆境と思えるような、深刻と思えるような事態が起きた時、それは、本当に真実なのでしょうか。自分が、逆境だ、深刻だと思っていることは、別の観点から見ると、「面白い」ことであり、「笑い」になるかもしれません。

 

そして、脳の仕組みを変える、人生を転換するチャンスとも言えそうです。自分が「黒」と思っていることは、本当は「白」なのかもしれませんよ。